
小学生スイミングキッズの食事タイミング|早朝・夜練習をエネルギー切れさせない組み立て方
「朝5時起きで練習に向かう日、何をどれだけ食べさせれば良いか分からない」「夜練習から帰ってきたあと、もう寝る時間なのにお腹を空かせている」。スイミングスクールや選手コースに通うお子さまの保護者の皆さまから、こうしたお悩みがよく届きます。
水泳は陸上競技と違い、水中での体温維持・呼吸制限・水の抵抗の中で長時間泳ぎ続けるため、エネルギー消費が大きいと考えられています。水は空気の約25倍の速さで熱を奪うため、体温維持のためにも余分なエネルギーが使われるという生理学的特徴があります(出典:Vybíral S et al. "Thermoregulation in winter swimmers and physiological significance of human catecholamine thermogenesis." Experimental Physiology, 2000)。早朝練習・夜練習の二極化したスケジュールに食事を合わせるのも、保護者の皆さまにとっては悩ましいところです。今回は、水泳キッズの身体特性と、早朝・夜それぞれに合わせた食事タイミングを、無理のない範囲で整理してみました。
水泳キッズの身体に求められる特徴
水泳の動きには、他競技にはない特徴がいくつかあります。
全身運動 クロール・平泳ぎ・背泳ぎ・バタフライのいずれでも、上半身・下半身・体幹をほぼ均等に使う競技です。サッカーや野球と比べると、身体の一部に偏らずエネルギーを消費する傾向があります。
体温維持にエネルギーが使われる 水中は陸上より熱を奪われやすく、消費エネルギーの一部が体温維持に回ると考えられています。「水の中だから涼しい」と感じる季節でも、身体の中ではエネルギーが使われ続けています(出典:前掲 Vybíral 2000、Pendergast DR et al. "Energy expenditure of swimmers during high volume training." Medicine and Science in Sports and Exercise, 1996)。
呼吸制限下の有酸素運動 呼吸タイミングが限定されるため、酸素・エネルギー供給の効率が問われます。
練習時間が長い 選手コースでは1回の練習で2〜4kmを泳ぐことも珍しくありません。長時間練習の競泳選手では、1時間の高強度練習で数百〜千kcal前後を消費する可能性も研究で報告されています(出典:Pendergast 1996、前掲)。
つまり、水泳キッズの食事の核心は 「長時間続く全身運動を支えるエネルギー源の確保」 にあります(出典:国立スポーツ科学センター(JISS)「スポーツ栄養」、日本スポーツ栄養学会)。
早朝練習日の食事タイミング
朝5〜6時に家を出る早朝練習日は、起床直後の食事が悩ましいところです。3つのタイミングに分けて整理します。
朝練の60〜90分前(家を出る前)の軽食
起きてすぐは食欲が出にくいことが多いため、消化が早く糖質中心の軽食が向きます。胃に重く残らない量を優先し、無理に詰め込まないようにします。スポーツ栄養の現場では「早朝練習時はおにぎり・バナナ・エネルギーゼリーなど、すぐエネルギーになる糖質中心」が一般的に推奨されています(出典:日本スポーツ栄養協会(SNDJ)「トップアスリートの食事 朝食」)。
メニュー例
- バナナ1本
- おにぎり半分
- 食パン1/2枚 + ジャム
- ハチミツヨーグルト
「これだけしか食べていなくて大丈夫?」と心配になるかもしれませんが、朝練前は 軽さ優先 がポイントです。練習で胃が重くならない量を選んでいきます。
朝練後の朝食(学校に向かう前)
ここでしっかり補給するのが、早朝練習日のリズムです。練習で消費した糖質と、これから1日活動するためのタンパク質を両方意識します。
メニュー例(5分以内で準備できるパターン)
- おにぎり + 卵焼き + 牛乳
- ご飯 + 鮭フレーク + 味噌汁(インスタントOK)
- トースト + チーズ + ゆで卵(前夜茹で置き)+ バナナ
前夜のうちにおにぎりを握っておく、卵を茹でておく、冷凍ご飯を活用する。そのレベルの仕込みで、早朝練習日の朝食は十分に乗り切れます。気合いを入れた朝食を毎日作る必要はまったくありません。
水分の前倒し補給
起床直後にコップ1杯の水・麦茶を、家を出る前にもう一口。練習会場では出発前に150〜200ml程度の水分を入れておくと、練習中の脱水を防ぎやすくなります(出典:日本スポーツ協会『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(第6版、2024年改訂)』)。
夜練習日の食事タイミング
19〜21時の夜練習がある日は、 下校後の食事タイミング がポイントになります。
練習2〜3時間前の夕方の食事
下校後すぐ(16〜17時頃)に、主食しっかりめの軽食 or 早めの夕食を入れます。米国小児科学会(AAP)も「運動の3〜4時間前に炭水化物中心の食事、1時間前に軽食」を一般的な目安として示しています(出典:AAP "Care of the Young Athlete: Nutrition and Supplement Use")。
メニュー例
- おにぎり2個 + 味噌汁 + バナナ
- うどん + 卵 + 海苔
- チャーハン少なめ + 卵スープ
揚げ物・脂質の多いもの、生野菜大量、繊維質が多すぎるものは消化に時間がかかるため、練習前は控えめにしておくのが無難です。
練習30〜60分前の補食
直前は糖質メインで、すぐにエネルギー化されるものを選びます。
- バナナ1本
- おにぎり1個
- エネルギーゼリー
練習後の食事(21〜22時)
帰宅後すぐは消化器官の働きが落ちていることが多いため、軽めから始めるのがおすすめです。
メニュー例
- 温かい雑炊
- おにぎり + 味噌汁 + ヨーグルト
- お茶漬け + 卵
寝る直前の重い食事は睡眠の質に影響することがあるため、消化の良いものを少量にしておきます。タンパク質は、牛乳1杯・ヨーグルト・卵で軽く補給する程度でOKです。
「21時までに食べ終えなきゃ」と神経質になる必要はありません。生活リズムに合わせて、消化に重くないものを選ぶことを優先していきます。
練習中の水分補給とプール特有の事情
「水の中だから汗をかいていない」と感じやすいですが、実際は発汗しています。特に水温が高い(30度前後)プールでは、発汗量が増えます。日本水泳連盟も屋外プールの安全管理として「水温と気温を足した温度が65℃以上では運動時間を短くする」目安を示しており、水中環境でも熱負荷がかかる前提で運営されています(出典:公益財団法人 日本水泳連盟『プール公認規則』、各種安全管理資料)。
練習中は水筒1本(500〜700ml目安)を消費するイメージで、水分を持たせるのがおすすめです。長時間の練習では、水だけでなくスポーツドリンクや経口補水液の併用も検討してみてください。
「絶対◯ml飲ませる」と決めるよりも、 練習後に水筒が空に近くなっていれば合格 くらいの感覚で十分です(出典:日本スポーツ協会『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(第6版)』)。
屋内競技ならではの栄養素:ビタミンDをどう確保するか
水泳は屋内プールで行うことが多く、日光暴露が他競技より少ない傾向があります。ビタミンDは骨の成長・カルシウム吸収に関わる栄養素として知られており、屋内競技のお子さまでは食事からの確保を意識したいところです。海外の調査では、屋内競技のアスリートは屋外競技より血中ビタミンD濃度が低い傾向が報告されており、日本人高校生アスリートを対象とした調査でも71.4%が不足・欠乏域に該当したという報告があります(出典:SNDJ「ビタミンDの充足度が日本人高校生アスリートの筋力と相関」、SNDJ「トップアスリートの55%がビタミンD不足/屋内競技やジュニア層ではより深刻」)。
食事から摂りやすいビタミンD源
- 鮭、さんま、いわし
- しらす
- 卵黄
- きのこ類(特にきくらげ・干ししいたけ)
メニューに取り入れる例
- 鮭おにぎり
- しらすご飯
- 卵焼きにしらすを混ぜる
- きのこの味噌汁(具を多めに)
サプリで補う前に、まずは食事から取り入れる発想がおすすめです。気になる場合はかかりつけの小児科に相談を。屋内競技のビタミンD不足のサインや具体的な対策は、別記事「ジュニア ビタミンD 不足 サイン」で詳しく扱っています(出典:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』、AAP "Care of the Young Athlete")。
塩素・体温低下への食の備え
塩素そのものに対する食事的対策には明確な研究エビデンスは限られていますが、抗酸化作用のあるビタミンA・C・Eを含む食材(緑黄色野菜・果物・ナッツ類)を日常的に取り入れる習慣は、身体の調子を整えるサポートになると考えられています。一方でサプリメントによる高用量摂取はトレーニング適応を妨げる可能性も指摘されており、 食事から自然に摂る方向が現実的 です(出典:東田 一彦「ビタミンと運動に関する最近の知見」日本スポーツ栄養研究誌 vol.11、2018年)。
体温低下対策としては、練習後に温かい飲み物・スープを用意しておくと、身体が温まりやすくなります。
- 味噌汁の作り置き(インスタントでもOK)
- インスタントスープ
- 温かい麦茶
練習前後で「冷たい飲み物だけ」にならないよう、一工夫しておくと回復を後押ししやすくなります。
のびしろめしのご紹介
ここまで読んでくださった保護者の皆さまの中には、「うちの子の練習スケジュール(早朝・夜)と体格・好みに合わせて、何をいつ食べさせれば良いか具体的に知りたい」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
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まとめ
最後に、水泳キッズの食事タイミングのチェックリストを置いておきます。
- 早朝練習日:朝練前は軽い糖質、練習後の朝食でしっかり補給
- 夜練習日:夕方に主食メインの食事、練習後は消化の良いものを少量
- 練習30〜60分前は糖質メインの補食
- 水中でも発汗している、水分補給は陸上競技と同様に意識
- 屋内競技は食事からビタミンDを意識(鮭・しらす・卵黄・きのこ)
- 練習後は温かい飲み物で体温回復をサポート
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参考文献
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 - https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
- 公益財団法人 日本水泳連盟『プール公認規則(2023年4月1日施行)』 - https://aquatics.or.jp/assets/files/pdf/pages/about/rule/r_tools20230401.pdf
- 国立スポーツ科学センター(JISS)「スポーツ栄養」 - https://www.jpnsport.go.jp/jiss/nutrition/tabid/1183/Default.aspx
- 日本スポーツ協会(JSPO)『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック(第6版、2024年改訂)』 - https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid523.html
- Vybíral S, Lesná I, Janský L, Zeman V. "Thermoregulation in winter swimmers and physiological significance of human catecholamine thermogenesis." Experimental Physiology. 2000;85(3):321-326. - https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10825419/
- Pendergast DR, Mollendorf J, Cuviello R, Termin AC. "Energy expenditure of swimmers during high volume training." Medicine and Science in Sports and Exercise. 1996. - https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9243495/
- American Academy of Pediatrics (AAP) "Care of the Young Athlete: Nutrition and Supplement Use" - https://www.aap.org/globalassets/publications/coya/nutrition_coya_final_secured.1.0.pdf
- 東田 一彦「ビタミンと運動に関する最近の知見」日本スポーツ栄養研究誌 vol.11、2018年 - https://www.jsna.org/cms/wp-content/uploads/2022/12/11-p010-015.pdf
- SNDJ(日本スポーツ栄養協会)「ビタミンDの充足度が日本人高校生アスリートの筋力と相関」 - https://sndj-web.jp/news/003389.php
- SNDJ「トップアスリートの55%がビタミンD不足/屋内競技やジュニア層ではより深刻」 - https://sndj-web.jp/news/003468.php
- SNDJ「トップアスリートの食事 朝食」 - https://sndj-web.jp/feature/support/002.php
※本記事の数値・推奨は2026年5月時点の公的資料・査読論文に基づきます。お子さまの個別の状況についてはかかりつけの小児科・スポーツ栄養士にご相談ください。



